はれるやです。皆様お元気でしょうか。

もうずいぶんと前になりますが、「チャングムの誓い」という韓流ドラマが終わりました。私は毎週欠かさず、（明日は大切な日曜日だというのに(^o^;)）観させて頂きました。なにか実話をモトにしていると聞きましたが、まあドラマですから、あれだけの完璧な人間はいるわけがありませんね。でも、多くの人々が感動し涙を流した名作であると思います。特に第２７話は、私もう涙ボロボロでした。

貧しい人々を助け、宮廷においても立派な働きを成し、どんなに理不尽な目に会ってもへこたれず、時に泣き、成功しても高ぶらず、努力を重ねて勉強をし、医女として次々に病人を癒していったのです。そしてふと気付きました。この主人公であるチャングムとイエス様がダブって見えるのです。

イエス様は当時、医者にもかかれないし薬も買えない、貧しい病人を次々といやしていかれたのです。本田哲郎訳聖書では「手当てをした」とあります。

イエス様は神様の子供でしたが、人間として地上に生まれました。勿論、奇跡を起こす力はあったはずです。しかしイエス様は病人を前にして、例えば一瞬にして大勢をいやしたのではなく、一人一人を前にして、丁寧に手当てをされたのです。そうですお医者さんのようにです。私の推測ですが、熱があれば冷えた布を額に当てたり、脱水症状の人には水を飲ませたり、傷口に薬草を塗ったり、病の部位に実際に手を置いたりと、様々な手当ての方法をとっておられたのではないでしょうか。

どっかのペンテコステや聖霊派の大集会で、お偉い大牧師先生様が、高〜〜い講壇から人々を見下ろしていやしの宣言をしたり、次から次へと人々の頭の上に手を置いていくような、そんなやり方をイエス様はしたはずがありません。

一人一人をいつくしみ、深いいたわりの心で、愛情をもって接し、その人の今まで受けた痛み・屈辱・絶望・苦しみを、自分のものとして共感されて「ああ、今までどれだけしんどい思いをしたんだ。辛かったでしょう」と、手を置かれ適切な処置をされ、いやされたと信じるのです。

さて本文は、ペテロのしゅうとめが熱病になっていて、その家に行かれた時のお話です。イエス様はその女性の手をギュッと握り締め、手当てをされました。すると熱が下がり料理を作れるほどにまで回復したのです。そしてこの出来事がきっかけとなり、町中の人が病人をイエス様の元につれてくるようになりました。

皆さん、ここで中止して欲しい点は、福音書の記者が、キリスト・イエスがメシヤ（救い主）であるとの色を濃くつけたいがために、ことされに不思議な奇跡として描かれていますが、元々はごく普通の事件だったのです。

現代のように医学の殆ど発達していない時代です。現代人の「病原菌」に対する常識と同じ位に、「悪霊」が病気の原因と考えられていた時代です。ですから当時、病をいやすと言えば多かれ少なかれ、「霊能者」によるまじないがらみが多かったのです。当時のいわゆる「医者」は悪霊と接する人ということで、一般から見れば畏れられていたのです。ですからイエス様に対しても、そういう霊能者として、病気を治す力ある者として見られていたのでしょう。

ただイエス様の場合違っていたのは、その医療技術をもっぱら「貧しい人々」つまり当時の被差別者たちのところで使われました。イエス様に病気を治してもらった人々というのは、ほとんどが社会的に最下層の人たちでした。王様とか金持ちとか全く縁のないところで、病人の手当てをされたのです。

このイエス様の病人を治す医療活動というのは「神の子」の権威を示して、宗教の一派を立てるという活動とは全く違うものでした。今流に言えばこれらは「福祉活動」そのものなんです。

公の期間（約3年と半）は殆どが野宿生活でした。村から村へ町から町へと渡り歩きました。一宿一飯の世話を受ける事はあったとしても、なにかの謝礼金を受けられたとは考えられませんね。貧しい民衆にとって最も重い苦しみは病気です。そして病気だけでも辛いのに、精神的にも病の原因が罪と汚れ・悪霊につかれているからと判断される。もう踏んだりけったりです。イエス様は病人に対してその事を否定しました。精神的にも慰めいやしてくださったのです。

ここでマタイはこの場面を預言者イザヤの言葉と結び付けています。（イザヤ５３：４）「まことに、彼は私たちの病を負い、私たちの痛みをになった。」

イエス様がペテロのしゅうとめの手に触れるという事は、相手の苦しみを自分の身に背負い込んで、引きうけていく生き方なのです。いやしはイエス様の生き様そのものだったのです。

話は変わりますが私事です。3か月ほど前クリスマスの前の忙しい時でした。脚立に上って作業をしていたら、脚の一部が２０ｃｍほど下に落ちこみ、その反動で私は後ろへ倒れるように落ちたのです。頭から落ちたら大事ですので、一瞬でしたが必死に身体をよじって右足のかかとから落ちたのです。不幸中の幸いでしたが、相当な痛みでしたので「やばい」と感じました。案の定かかとの骨の中がつぶれていたのです。今も痛いです。でもこの私のミスさえも神様は用いて下さいました。このところずっと、長男との関係がギクシャクしていて（恐らく反抗期）会話がなかったのです。私自身、非常に辛い状態だったのです。病院から帰って玄関先でバッタリと長男と会いました。私はその時、生まれて初めて松葉杖をついていたのです。その姿を見てビックリしたのでしょう。「パパ、大丈夫か？牛乳飲んだ方がエエデ」と私に言ってくれたのです。長男の私へのあわれみの言葉に、私は泣きそうになるくらい感動しました。そして「この怪我は神様からのプレゼントなんだろうか？痛いけど神様本当に感謝します」と祈りました。

さて、今、世の末が近い時・不安の時代です。人々は特に奇跡を売り物にする宗教に飛びつきます。キリスト教の世界でもそうです。人々の奇跡待望が強い事をいいことに、それに乗っかかっていけば宗教として成功するかもしれません。神の力を売名に利用するやり方で、多くの新興宗教が人々から搾取し、鬼のようなことをして大きくなっています。

プロテススタントの教会の牧師で、横浜の寿町（日雇い労働者の町）に渡辺英俊牧師がいらっしゃいます。彼の証しです。

カラパオ会（寿外国人出稼ぎ労働者と連帯する会）の仲間が１１月末に近くの川べりで野宿している韓国人が重い病気にかかっているのをみつけ、日曜日の会議で知らせてくれました。それを聞きとじかくその場所を訪ねましたが、すでに下半身全体がふくれあがっていて立つ事もできないでいるのです。

在留資格の無い外国人には健康保険も生命保険も認めないこの国の福祉行政。このままいけば確実に死が待っている病人を我々の手ではどうすることもできない。頭を抱えてしまって家に帰る途中「神様なんとかしてください」と祈りました。

知り合いの医者に電話をしても留守で、そんな夜更けにふと思い出したのは、神奈川県では「行旅病人及び行旅死亡人取扱法」（行旅法）が使えるという事・・・要するに［行き倒れの病人や死亡者がいたら、そこの市町村が面倒をみなければならない。その費用は県が負担しなければならない。］という法律を、移住外国人の医療支援で壁にぶつかった支援団体の専門家達が、棚から引きずり出してきた。

そしてこれをきちんとやれと自治体に迫りました。医療費の払えない外国人の未払いが増えて病院が困っていた事情もあり、各地の自治体の中にこの法律を外国人医療に使うところが出てきて、神奈川県もその一つだったのです。

この野宿している病人は正に行倒れ状態ですから、「よし、これならいけるんじゃないか」と翌日の朝から仲間と相談し、救急車で病院に送ったのです。長年の運動の連携がモノをいったんですね。病気は肝硬変でした。そして一ヶ月年末ギリギリになって病院から連絡があり、幸いにも病状が良くなったので、「退院して通院治療に切り替えて欲しい」という。

退院したら行旅法は使えないし、通院の治療費や生活費は工面できないし、帰国するほか無いんですが、本人は本国でも身寄りが無い、行く所が無いので、本人は「日本で働きたい」と言うんです。そんなのは無理、どうしよう。すると別の支援団体のボランティアの女性がこれを聞いて、カトリックのネットワークでソウルの施設に話をつけてくれ、引き受けてもらえる事になり、本人も納得して帰国に合意しました。年末に満員の航空券がやっととれて、大使館の臨パスの発行から入管の手続きまで一両日で済ませ、そしてこの成り行きに励まされた同国人の仲間たちが、あっという間に募金で帰国費用を集めてくれました。３０日に送りだしその夕方無事に施設に着いたとの知らせをもらって、私達の２０世紀は終わったのです。

振り返ってみると、どれ一つをとっても信じられないようなラッキーの連続でしたけど、単なる幸運ではなくて、それまでの運動で獲得してあった成果と支援のネットワークがあって、それが綱渡りのようにつながって一人の命を助けたんですね。善意の人々が少しずつ手を出して、問題に触れて体を動かした。それがこの結果を呼んだと思うんですよ。みんなが何ほどかずつこの人の苦しみに手を触れた。それがつながって奇跡を生んだんですね。

私はこの証しを読んで、ものすごく感動しました。私が在日韓国人だからということもありますが、これこそが本物の奇跡だと思うんです。イエス様のいやしのみ手は、２１世紀において、このような形でも働かれているのですね。

イエス・キリストはあなたを愛しておられます。