「福音って？」

 

はれるや！

皆様、ハッピー・ニュー・イヤーです。今年もどうぞよろしくです。今回は記念の１００回目の更新です。今まで本当にありがとうございました。これからもどうぞよろしくお願いします。

去年もいろいろとありましたね。特にミャンマーでの僧侶と市民のデモを取材中のカメラマンが（日本人）、後ろから至近距離で銃撃されて吹き飛ばされているショッキングな映像が流されました。ミャンマーの軍事独裁政権の鎮圧による犠牲者が数名出る中で、世の中まだまだ（北朝鮮だけではない）

極度に市民を抑圧し続けている国があることを思い知らされました。あのインドの非暴力・非服従の抵抗運動と同じように、僧侶や一般市民たちに対しての水平射撃はとても赦せるものではありません。各国が協力して行動に移すべきでしょう。

さて、私事ですが小さなころからずっと劣等感を持っておりました。そして人に対して「うらやましい」と思ったことは数知れませんでした。背が低かったものですから大きな友達を見てうらやましくも思いました。ある時は足の速い子を見て、ある時は立派な門構えの家を見て・・・

牧師になってからも、急速に信徒数が増えて大きな教会堂を建てた先輩牧師を見て、うらやましいどころかねたみさえ生じました。けれども、ここ数年前から「恵み」について本当に理解しだしてから、それらから解放されてしまったのです。

今は一体何がうらやましいと言えば、釜が崎で底辺の人々とともに連帯して活動されている本田哲郎神父や、横浜の寿町（関西の愛隣地区のような所）で外国人労働者の支援活動に奔走する渡辺英俊先生を見て、うらやましく思うのです。「ええなあ、イエス様と同じ生き様やんか」と。

他のキリスト教会の信徒の数が増えようが減ろうが、立派な会堂を建てようが忙しかろうが、全く関心がありません。

「あんたら自分らだけで内々で楽しく信仰ごっこをしとったらえやん？」てな感じです。

イエス様のおっしゃったクリスチャン生活と言うか、信仰とは一体何なんでしょうか？

福音って？伝道って？

今まで教会がやってきた宣教とは、「教え」を「宣べ伝える」という字のごとく、こちら側がすでに持っているものを、まだ持っていない人に分けてあげるというイメージでした。

しかし本当の福音伝道とは、「ともにあずかる」ことではないでしょうか。与えるという一方通行的なものではなく、こちらも一緒に新しく受けるというイメージなのです。

ですから福音とは難しい教理とか堅苦しい教義ではない、かつて起こり、歴史の中で起こり続け、今また私達のところで起こる「出来事」つまり「事件」なのです。そして、その福音事件とは本文にあるように、貧しい人々が対象となっているのです。

同時に囚人の解放・盲人の開眼・虐げられている人々の解放・・・つまり現実の貧困や障害や抑圧からの解放が「福音の事件」なんです。その事件をイエス様が２０００年前に起こしているのです。

ですから今日のキリスト教会がやっているような、「はい、十字架の福音を信じましょう」「はい、洗礼を受けましょう」「はい、罪が赦されました」「よかったですね、これであなたは神の子供です」「はい、神の子供の生活はこうこうですよ。・・・これらを守りましょう」と、主に儀式や心の中だけの作業で終わってしまい、あの事件からはほど遠い、自分達だけの狭い世界の中だけでｆａｍｉｌｌｙ　ｆａｍｉｌｌｙすることが福音ではないのです。

福音とは、社会的な不正義で苦しんでいる人々を解放し、搾取で作られた借金の証文を破り捨てることなのですよ。それから「主の恵みの年」を告げ知らせることなんだと。

イエス様はイザヤ書を引用し、それらを実際になされたのです。主の恵みの年とは、レビ記２５：８〜１７に定められた律法です。「ヨベルの年」という５０年に一回、全ての借金が棒引きされ、土地は元の持ち主に返され、奴隷が解放されるという定めです。

旧約の神の民イスラエルが、ひとつの夢として描いた社会全体の「再平等化」であり、限りなく革命に近い「世直し」の夢が「主の恵みの年」なのです。イエス様はその実現のために来られたのです。

現代のこの世界には「被収奪地域」いわゆる第三世界があります。一体どのような仕組みで先進諸国が収奪しているのでしょうか。ミャンマーやフィリピンなどは、人口のわずか２％そこそこの特権階級がべらぼうに金持ちで、この連中が「国際資本」と手を組んで持ち出してしまうのです。

特に日本にです。日本は先進諸国です。各国から資本が奪ってきたものをふんだんにあてがわれて、目も耳も口も「モノ」でふさがってしまっている人間たちの地域なのです。自分達が直接でなくても、第三地域からの収奪や搾取に関わっていることを、どうぞ認識してください。まずは知ることです。そしてそれらの収奪されている人々が、その抑圧から解放されるように、考え祈り、そして動くことなのです。

皆さん、なぜホームレスという存在があるのでしょうか。なぜ売春をする女性がいるのでしょうか。なぜ釜が崎や寿町や山谷に代表する寄せ場があり、日雇い労働者の町となっているのでしょうか。

誰もなりたくてホームレスになっているわけじゃあない。生活ができないからテントを張っているのです。売春でしか生計を立てられないからなんです。生活のために空き缶を拾うのです。好き好んで遠い日本にまで来て不法滞在をしていないのです。国で待つ家族を食わせるために、低賃金で警察や入管にびびりながら、必死で何の保障もないところで働いている外国人労働者がいるのです。

こういう人々を放ったらかしにしている国や行政を動かすために、私達は祈り、心動かされて実際に運動なり動き出すことが神の心でしょう。

一つ大切なことを言いましょう。祈りだけでは何も起こりませんよ。

抑圧され差別されている人々を支援する団体は日本に沢山あります。あなたが信頼できる団体の運動に参加することはいいことです。

実は、本来は教会がすべきことなのです。教会がおかしな方向に行ってしまっていることが嘆かわしいことなのです。

イエス様が嘆いて言われました。「狐には穴があり、空の鳥には巣がある。しかし人の子には枕するところがない」と。

鳥や獣は自分に備わった本能で巣を営むことができるのに、鳥よりもずっと優れた人間が、人を占めだしてねぐらを奪ってしまい、その人々を放ったらかしにしているのです。

イエス様は最底辺の人々の位置に立って物事を見られていたのです。このイエス様と同じ視点で見ていき、歩んで参りましょう。　

 

イエス・キリストはあなたを愛しておられます。